東京地方裁判所 昭和57年(む)1072号 決定 1982年11月29日
主文
本件準抗告の申立を棄却する。
理由
一 本件準抗告申立の趣旨及び理由は、別紙「準抗告の申立書」写し記載のとおりである。
二 一件記録及び当裁判所の事実調の結果によると、申立人は、昭和五七年一一月二六日午後一時五〇分ころ、本件の担当検察官中原恒彦に対し、電話で、二度にわたり、被疑者と接見したい旨申入れたが、検察官は申立人に対し、その都度、接見指定書を交付するので検察庁まで出向かれたい旨答えたこと、しかし、申立人は、右二度とも、弁護人には接見指定書を受取りに行く義務はないとして、接見の具体的希望日時を申出ることもなく電話を切り、同日夕刻本件準抗告申立書を裁判所に持参し、本件準抗告の申立に及んだものであることが認められる。
ところで、刑事訴訟法三九条三項は、検察官らの接見指定の方式(書面によるのか、電話等口頭でなすべきか)について何ら明定していないところ、書面による接見指定には、指定の内容を明確にし接見をめぐる過誤紛争を未然に防止するとともに、不服申立があった場合の審判の対象を明確にする等の利点があるのであるから、特に、弁護人において直ちに接見しなければならない緊急の必要性があるとか、書面を受取るために検察庁に出向くことが弁護人にとって著しい負担となる場合など、特段の事情がある場合を除き、検察官が接見指定を書面でなすこと及び弁護人に対し右書面を受取りに来るよう要求することは許されるものと解すべきである。
本件においては、特に、弁護人において直ちに接見しなければならない緊急の必要性があったとは認められず、また、検察庁、弁護人の事務所(東京都千代田区神田鍛治町)、被疑者の在監場所(世田谷警察署)の距離関係及び現に弁護人が昭和五七年一一月二六日夕刻検察庁の隣りにある裁判所にわざわざ本件準抗告申立書を持参していること等からして、接見指定書を受取るために検察庁に出向くことが弁護人にとって著しい負担となるものとも認められない。
そうすると、前記担当検察官中原恒彦の措置には何ら違法不当なものはなく、同検察官が接見を拒否したものともいえないから、結局弁護人の本件準抗告の申立は理由がないものといわざるをえない。
三 よって、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により本件準抗告の申立を棄却することとする。
(裁判官 松本昭徳)
<以下省略>